(この号が出る頃、今年のミステリ部門のベストセラーが発表になっているだろうが、間違いなく上位を占めるであろうと思われる2冊を紹介)

「四つの雨」ロバート・ウォード著 田村義進訳   ハヤカワ文庫

 ボルチモアのダウンタウンに住む、50才を超えた心理療法士ボヴ(ボビー)ウエルズは、ポーカーで身をつぶし妻にも逃げられ、友人はジャーナリストデイヴ・マクレーンと彼の恋人ルーアンのみ。少ない患者の中に美術商エイミル・バーダンがいて、彼が言うには商売敵コリン・エドワーズが、自分が持っている高価なヴドウの仮面を奪おうとしているという脅迫感にかられていた。

 そんな鬱々としたボビーは、木曜の夜だけは趣味のギターをもって、ロッジでバンドライブをやっていた。そんな時いい女、ジェシー・リアドンがボーカルで参入。ボビーの人生に光がさし、愛し合う二人。しかしジェシーは言った「40近くて若くないし、お金で苦労させられるのはもうこりごりなの。貧しさにいいことはひとつもない」と。言われてこの幸せを失いたくない、しかし金に困ったボヴは考えた。そうだあれを何とかしようと一歩踏み出した。品性と知性が欠けたレイモンドに計画を打ち明け、悪仲間と金庫破りに成功、その足で取引場所に全員集合した。その時に起こった閃光と爆発によって大混乱。

 さあこれからが意外な展開になって面白い。血の雨の生臭さを通り越して、ボルチモアから永遠にさよならして、メキシコの海岸で寝そべっているのは・・・・・。

(ややコミカルではないかと言われる読者に、次の強烈な1冊。すでにコーウェン兄弟によって映画化され来春日本公開予定)


「血と暴力の国」コーマック・マッカーシ著 黒原敏行訳   扶桑社文庫

 テキサス州メキシコ国境の荒地ルウェリンで、狩猟していたモスは偶然、麻薬密売人の仲間割れによる銃撃戦の跡地に通りかかった。穴だらけの車両と、多くの死体、さらに車に残された莫大な現金を見つけた。誘惑にかられたモスは、金が入った鞄を持ち逃げする。

 動き出したエド・トム・ベル保安官の予感「なんだかおれたちが今まで見たことがない事が起ってるような気がする」本文の会話にはこの「 」が一切ない。さらに冷酷無比アントン・シュガーが、モスがどこに隠れてもすぐに接近してきた。そのはず札束に位置を発信するトランポンダーが仕掛けられていたのだ。イーグルパスのホテルで麻薬取引団との派手な銃撃戦、多くの死者がまた山をなす。モスも撃たれて重傷を負う。そこにシュガーを良く知る、新たな仕事人カーソン・ウェルズの登場。

 ちょうど本の真ん中くらいで、モス(または金)を追うシュガーとベルそしてカーソンの4人の追っかけが始まり、さあ面白くなったぞと思ったその時。その時から、私には何とも気に食わない展開ながら、小説は結末にむかって突き進んでいく。皆さんはどう感じられるか、一読をお薦めしたい。