「真夏の航海」 トルーマン・カポーティ著 安西水丸訳 ランダムハウス講談社
没して20年余、チビで酒とドラッグにまみれて死んだ男カポーティが十代後半に書いた幻の処女作を紹介。ニューヨークの夏に展開した青春の思い出を綴る。
父らモンド・マクニール、母ルーシーの間に生まれた姉アップルと妹グレディ(17)。グレディが主人公で一風変わったひねくれ者。家族はグレディを残して船旅に出るが、それはそうしてはならなかった旅であった。グレディは14歳の頃、母の愛情が変わったと思っていた。幼馴染はピーター・ベル。
ある朝、駐車場で知り合ったクライドは、グレディをデートに誘ったが、いつも距離を置く彼女をまったく理解できなかった。「変な奴」だが結局二人は結婚。しかしクライドの母マザー夫人と子供たちとは、不安な毎日を送らざるを得なかった。
そしてニューヨークに熱波が襲来した。登場したすべての若者を乗せて暴走する車、ハンドルを握るグレディの手は固かった。
(次は正真正銘ガルシア・マルケスが77才で書いた労(老)作である)
「わが悲しき娼婦たちの思い出」 G・ガルシアマルケス著 木村榮一訳 新潮社刊
この本のタイトルとオビにつられて、よからぬ妄想を抱いてはいけない。確かに中扉に川端康成の「眠れる美女」の一文が出て、大いに啓発されたと認めてはいるが。
書き出しは「満九十歳の誕生日に、うら若い処女を狂ったように愛して、自分の誕生祝にしようと考えた。ひそかに娼家を営んでいるローサ・カバルカスのことを思い出した」「普通の人がほとんどあの世へ旅立っているこの年になって、新しい人生が始まることになった」。
老人の仕事は<ラ・パス日報>の外電屋。老人の兆候としては、体中がむやみに痛いことぐらい。ローサから電話があって、14才の処女が夜十時に待っている。料金は5ペソ現金払い。老人はいそいそと出かけた。上客の部屋に仕事に疲れて裸で寝ている少女。彼は彼女にデルガーナと名づけた。ここで第1章が終わる。
それから新聞紙上に引退を表明したり、この少女のことを書いたりするうちに、「私はこれまでに一度も経験したことのないほど充実し、幸せな思いを抱いてデルガーナへの愛に生きていた」ことになる。新年になっても二人の関係は続いたが、突発的な事件が起き、娼館は封鎖された。老人はもんもんとした日々を送るが、1ヵ月後ローサが戻り「あの娘はいるよ」と告げる。それから・・・。
小説に従って逐一述べすぎたが、これからは先は、妄想なしでぜひ読んでもらいたい。さすがにガルシアが仕込んだ、波乱にとんでなおユーモアにあふれた楽しい物語を堪能していただきたい。