(今回はかなりハードな2篇を紹介)

「天使と罪の街(上・下)」 マイクル・コナリー著  古沢嘉通訳  講談社文庫
  FBI捜査官レイチェル・ウォリングに、同じFBI行動化学課のシェリー・ダイから電話が入る。10年前のあの男、ポェット(詩人)とあだ名される偏執的執着殺人鬼ロバート・バッカスが動き出したと伝えられる。
 一方ハリー・ボッシュに、6年前心臓移植によりFBIを退職したテリー・マッケイレブが死に、妻のグラシェラから「あの人の死を調べて」と依頼が来る。心臓に必要な薬が、まったく効かない無害なものを誤用した事故死とされたからである。テリーは釣り船と観光船を兼ねたボートを持っていて、それなりに繁盛し楽しくやっていた。ましてや単なるミスや自殺によって命を落としたはずがないのだと。
 ハリーはボートに残された写真や地図、パソコンに残されたデータから捜査を開始する。このテリーのプロファイルの多さと複雑さ、謎のメモなどに萎えてしまいそうになるが、かまわずに読み進められること。その中に、写真を嫌う野球帽をかぶった謎の男に気づく。
 さらにラスベガス近郊のザイジックス・ロードと称される砂漠に、殺人課の刑事ばかりを惨殺して埋められた、6人の死体が発見される。現場に飛ぶレイチェルを尾行するバッカス。バッカスは整形し、すぐ近くにいても気づかれることがない。テリーもバッカスの存在に感づきザイジックスに誘い出されたようだ。ハリーもラスベガスに。
 さあここに、ハリーとレイチェル、その2人の動きを追うFBIと、バッカスの追っかけっこが始まる。下巻の後半から面白く一気に読ませる。

「闇の底」 薬丸岳著 講談社刊

 少女を犠牲にする痛ましい性犯罪事件が後を絶たないが、この本は罪を償って出所したはずの人間にゆがんだ鉄槌を加える、サンソン(死刑執行人)と名乗る男の物語である。従って小学生以下の娘がいる父兄は、この本を読まれないほうが良い。息が詰まりそうな闇の底を覗くことになるからである。
 内藤信雄は普通は50過ぎの中年男だが、弱い者を見つけるとぎらぎらと本性を表す。その男は内藤に警戒されることなく、包丁で喉を掻っ切って殺す。これが小説の出だしだ。
 日高署長瀬一樹(34)は、24年前自分の過失もあって、幼い妹絵美を殺されて失っていた。今も牧本加奈の幼い死の犯人を追っていた。一方坂戸署の村上は、木村正次の生首事件を追っていた。異例なことだが、長瀬は坂戸署に行き合同捜査を開始する。そこにサンソンを名乗る男からメッセージが届く。「罪深き者どもよ、よく見るがいい」男が狙っているのは幼児性犯罪事件の犯人達である。男は目覚めた。この犯行を完結するためにには協力者が必要だ。
 そして最後、絵美を殺した小坂浩美を追い詰めた男がしたこととは・・・。読者はこのラストシーンをどう読み解かれるか。長瀬は警察を辞職した。