「赤い指」 東野圭吾著 講談社刊
この本は直木賞受賞後1年して刊行されたが、それ以前に「小説現代」に掲載されたのを、新たに書き下ろしたものである。
もと警官で、末期のガンで入院中の老人加賀隆正を見舞った、甥の松宮修平も駆け出しの刑事、加賀を父のように慕っている。
会社員前原昭夫(47)は、妻八重子から「とんでもないことが起こったから、すぐ帰ってきて」と悲痛な声の電話を受ける。家には、認知症の母と会話のない息子がいるが、何か事故でもあったかと急いで帰ってみると、庭に小さな女の子の死体が横たえられていた。本当に困った状態だ、混乱する前原夫婦のうろたえようは、哀れで滑稽でもある。そして二人が達した結論は、少女を近くの公園の便所に遺棄して、通り魔の犯行に見立てること。犯人は息子なのか、昭夫に閃いた邪悪な筋書き。
当然少女の死体は発見され、練馬署捜査一課が乗り出す。その中に加賀の息子恭一郎と松宮のいとこ同士がペアを組む。二人は近所の聞き込みと、死体の背に芝が付いていたことによる、各家の芝のサンプルを鑑識に持ち帰ることに。何度も前原家に訪ねてくる刑事に辟易とする二人がとったとんでもない秘策。
実に面白く読ませる推理小説だった。その中に折り込まれた親子の愛憎も、じわっと泣かせる。
(母娘の問題を正面からとらえた)
「渋谷」 藤原新也著 東京書籍刊
写真家として、多くの著書をあらわした藤原新也が、50万人が通る交差点を持つ渋谷に遊ぶ女の子にインタビュー。まだ幼い心を持つ少女の悩みを解き明かしていく。その対象はこの話の場合母親であった。
年頃の子供に悩みを持つ親、特に母親には必読の書であろう。ただし、われわれは単なる興味半分のセクハラに陥る恐れがあるため、こういう取材を真似てはいけない。
(がらりと変わって抱腹絶倒の1冊)
「まさかの結末」 E.W.ハイネ著 松本みどり訳 扶桑社文庫
トップの「使者の挨拶」を紹介。
テレビで他の追随を許さない高視聴率番組があった。男女5人の出場者を選んで、デラックススウィートの一夜を過ごし、このうち4人は億万長者、残った1人が運命の結末を迎えることになる。方法はカメラをつけたヘルメットをかぶり、飛行機から飛び降りる。4人にはパラシュート、残った1人は死のダイブになる。
最後に飛んだフェリックスの場合は? この本のタイトルは「まさかの結末」だったのを思い出し、苦笑ながら大笑い、ごめんねフェリックス。その他パーティジョーク的な軽いものや、笑えない「万引き」「強盗の襲撃」など、シルエットの挿絵も楽しめる。