「黒い夏」 ジャック・ケッチャム著 金子浩一訳 扶桑社文庫
私はこの本をR−16に指定したい。それほど強烈なバイオレンス小説である。
1965年6月ニュージャージー州スパルタ。キャンプに来ていた若い娘二人が、意味もなく22口径ライフルで殺された。殺したのは札付きのヤク中レイ。一緒にいたティムと恋人ゼェニファーも呆然と見送るほかなかった。これがプロローグ。
それから3年が経過し、チャリー・シリング刑事は、犯人はこいつだと確信するも証拠がない。相棒は元刑事のエド・アンダースン(49)。困ったことにエドは、許される年令ぎりぎりの18才のサリーと親しい関係にあった。
モーテル経営の父を手伝うレイは、相変わらずヤクと女を追いかける毎日。こともあろうにサリーがこのモーテルで働くという。田舎では収入に見合う職が少ないという理由で。当然チャーリーとエドは反対。レイは人殺しかもしれないとまで忠告したが。しかしサリーは働き始めた。同時にレイは美人の転校生キャサリンに「しるしを刻むため」付き合い始め、狂った予感をはらんで第1部が終わる。
このキャサリンとの付き合いが結構長い。しかし「キャサリンはレイ・パイをもてあそんだのか?」またサリーはレイを全く寄せ付けない。プライドの固まりのレイが二人の美人に無視された。ついに錯乱したレイの狂気。傲慢と愚かさが爆発した。これからの修羅場は、書き表すことができないひどさである。
(芥川賞、直木賞受賞作を読む)
「土の中の子ども」 中村文則著 月刊文藝春秋より
暴走族に取り囲まれた私は、相手にわからせるためにわざと危険な行為をし、苦痛の中に何かに到達しようとする意志を持っている。
この書き出しで大いに期待したが、中盤からがだらしない。4階から中身が入ったコーヒー缶を投げる。仮に自分が落ちたらどうなるのか、この怠惰で物憂い病的な考え。「死ねばよい、土の中で死んでいればよかった」話の脈絡が解らない。選評も芳しくなかった。
「花まんま」 朱川湊人著 文藝春秋刊
この本はオール読物に掲載された短編をまとめたもの。話を総合的にまとめると、大阪のボケとツッコミあり、必ず子どもが主人公であり、幽霊人情話といってよい。中でも「摩訶不思議」には大笑いした。
表題「花まんま」を少し紹介しよう。東大阪市の加藤俊樹の妹フミ子は、4才でそのかわいさがガラリと変わる。自分は彦根にいて21才で死んだ繁田喜代美の「生まれ変わり」だと言い出した。
フミ子が7才になったとき、二人はその確認のために彦根に向かった。「花まんま」とは空の弁当箱に花を詰め、弁当に見立てるままごとの材料。
この本はそれなりに読ませるし、買って損はない。