(奇妙といえば次のミステリーも)
「炎に消えた名画」 チャールズ・ウィルフォード著 浜野アキオ訳 扶桑社文庫
「世界美術大百科」全24巻の一部を執筆したジェームズ・フィゲラス(35)は、それだけに名高い美術評論家の一人。特に重要な存在でありながら、作品が残っていないフランス人画家ジャック・ドゥビェリューについては彼しか書けない。そこに目を付けたのが美術収集家で、弁護士のジュゼフ・キャシディ。彼はジェームズに、ドゥビェリューの絵画を盗み出してでも手に入れるよう依頼する。画家は密かにフランスからフロリダに移り、毎日隠遁生活を送っているという。
ジェームズはドゥビェリューを訪ね、取材の許可を得た。ここで著者の美術論が延々と続く。専門的で分かりにくく、本を投げ出そうかと思ううちに第一部が終わる。
第二部で、ジェームズは恋人ベレニスと画家を訪問し、硬軟のインタビューの繰り返しで、何とか画家に取り入ることに成功する。それからジェームズがとった奇妙で、破廉恥な行動はお読みいただきたい。
最後に滝本誠の長い解説があり、画家のドゥビェリューはヂュシャンがモデルではないかと推論し、この小説をアート・ノワールと名付けている。