「エヴァーグレイズに消える」 T・J・マグレガー著 古賀弥生訳 ハヤカワミステリ文庫
透明人間を扱った本が時々出るが、どこまでが透明になるかが問題。身体だけなら常に裸でいなければならないし、服を着て手や顔を覆えば目立ってしょうがない。
この本では1998年、実験によってグリフィン夫妻が3万ドルの報酬で透明人間になったが、妻ローガンは基地を逃げ出した。文字通りエヴァーグレイズに消えたのだ。ここでは透明人間が、いろんな物を数週間使用すれば透明になるという都合の良さ。ローガンは基地に戻り、メインコンピューターのハードディスクを盗むーーー。
まあどうしてもアメリカらしい荒唐無稽さは免れないから、後は読者にお任せして終わります。
「弁護士は奇策で勝負する」 デイヴィド・ローゼンフェルト著 白石朗訳 文春文庫
この本の語りは、主人公で型破りの弁護士アンディ・カーペンター。
父ネルソンは、7年前首席検事であったものの、2200万ドルの法外な遺産を残してくれた。それともうひとつ、黒人ウィリー・ミラー(28)死刑囚の再審を開始することを願って死んだ。
事件は女性新聞記者デニース・マクレガーが、たまたま寄ったバーで、バーで働いていたウィリーに殺されたというもの。ウィリーは泥酔していて全く憶えていない。全ての手がかりや証拠はウィリーに不利なものばかり。それでも父が依頼してきたのは何故か、多額な遺産はどこから出たのか、父が持っていた友人たちと写った占い写真は何を知らせようとしているのか。アンディの地道ながら時には奇策を労しながらの再捜査と裁判が始まる。アンディのシャベリまくりと、ユーモアを通り越したおちゃらけた減らず口には、辟易とするが辛抱してもらいたい。
190ページから、あだ名ハチェト判事の下、リチャード検察、味方は助手のケヴィンと元愛人ローリー調査員で再審が開始される。やがて事務所に暴漢が侵入、「今度は殺す」とアンディに脅しが入る。
真実が見えてくるのは終わりの方だが、小説の流れはちょっと違うんじゃないかと、細かいことを言ってはダメ。アメリカ探偵作家クラブの新人賞候補作なんだから。くわしくは長い解説にある公式サイトを見られるとよい。
(もう少ししっかりした文庫をご希望で、まだお読みでなければ、昨年出た「鉤」ドナルド・E・ウェストレイク著 文春文庫が奇策ながら面白い)