「憤怒」 G.M.フォード著 三川基好訳 新潮文庫
 プロローグで、ウォルター・ハムズというろくでなしが、連続殺人事件解決の公開インタビューの席で殺され、撃った犯人もコルト45で自殺するという衝撃的なスタート。なるほどタイトルからして被害者の親族が「憤怒」のあまり一発お見舞いしたものと思われるが、これが大違い。本当はどうなのか、少し紹介しよう。
 舞台は1998年頃のワシントン州シアトル市、この事件の一週間前からの話。8人連続殺人事件の犯人ウォルターは、一週間後死刑が執行されることになっている。唯一の殺人未遂の被害者リーン・サンプルズ(18)の証言によるもの。しかし、彼女はこの証言は警察署によって作られたものだと、タブロイド紙の<シアトル・サン>に訴えてきた。女社主ナタリーは、契約社員ランク・コーソを呼び出し、事情を話す。むくむくと正義感をもたげるコーソは、写真家メグ・ドアティとコンビを組み事件を洗い直す。事件の解決には真犯人を挙げるほか道はない。地道ながら確実な捜査により、ちゃくちゃくと犯人像は出来上がっていく。一方小説の半分位で、真犯人の目撃者ロバートを探し出した。そしてついに真犯人を追い詰めることに。
 しかし、話はそう単純には終わらない。まだ120ページほど残っている。さあこの部分を読者はどう感じられるだろうか。
 G.M.フォード(本名らしい)のこの他の作品は、今から新潮文庫で発刊される予定である。コンビも再び登場予定。

「解夏」 さだまさし著 幻冬舎文庫ほか
 単行本はずいぶん前に出たので、1月17日東宝系封切の映画を紹介しよう。
 さだまさしは本当に長崎が好きだ。皮肉にも主人公(大沢たかお)が、ベーチェット病で失われる視力に換わって、随所に取り組まれる映像と長崎の音の集成がみごとである。長崎の坂段(石段の坂をいう)に降りしきる雨の中、病魔と共に闘うもう一人の主人公(石田ゆり子)の姿が涙を誘う。二人の若い主役の他に、脇を固めたキャストも好演で素晴らしい映画に仕上がっている。
 是非映画をご覧いただき、「精霊流し」に続く「解夏」をよろしく。

最後に長崎ゆかりの本として
「グラバー家の人々 花と霜」  ブライアン・バークガフニ著 平幸雪訳 長崎文献社刊
 内容はタイトル通りで説明は省略するが、講談社を退職した私の友人堀憲昭の初仕事。ブライアン教授が6年ぶりに加筆復刊されたもの。
 是非本棚の片隅でも陳列し、学校図書館にも薦めて応援して欲しい1冊。