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斜読玩味

~~S・リード氏のちょっと辛口書評帖~~

                             
書名 著者名 出版社 日付
「紫のスカートの女」 今村夏子著 「文藝春秋」9月号
第161回
芥川賞受賞作
10/25
「裸の華」 桜木紫乃著 集英社文庫
「送り火」 高橋弘希著 文藝春秋 5/7
「燃える部屋 上・下」 マイクル・コナリー著
吉沢嘉通訳
講談社文庫
「偽りのレベッカ」 アンナ・スヌクストラ著
北野あかね訳
講談社文庫 7/3
「死の接吻」 アイラ・レヴィン著
中田耕治訳
ハヤカワミステリ文庫
「アーサー・ペッパーの八つの不思議をめぐる旅」 フィードラ・パトリック/著
杉田七重/訳
集英社文庫 2/19
「黒い睡蓮」 ミシェル・ビュッシ/著
平岡敦/訳
集英社文庫
「日の名残り」 カズオ・イシグロ/著 
土屋政雄/訳
早川書房
(初版は中央公論社刊)
11/6
「鏡の迷宮」 E・O・キロヴイッツ/著 
越前敏弥/訳
集英社文庫

*書名をクリックしたら、内容にいきます。

「紫のスカートの女」今村夏子著 「文藝春秋」9月号 第161回芥川賞受賞作
  また一人厄介な作家が現れた。
 本人の受賞エッセイによると、19才の頃引きこもりと摂食障害を起こし、「誰とも関わらずに済む仕事が小説家」だったと述懐している。 かと言って他にも受賞した作品はある。結婚もしている。
 ぼさぼさ頭に爪が汚れた近所のむらさきのスカートをはいた女。
この女を観察し続け、知り合いになりたがっている私。
 私とこの女とは偶然にも同一の職場に勤務となる。ホテルM&Hの派遣清掃員である。 女はみんなの前の自己紹介では日野まゆ子という。意外にしっかりしていて、2~3日で仕事に慣れ上々のスタートを切る。
 2か月が経った頃、むらさきのスカートの女は所長と付き合い始め、所長の車で送迎されているという噂が立つ。
その真相を確かめるべく休日の二人を一日中付け回す私。ささやかな事件の後、二人の関係が破綻してとんでもない展開に。
 結末はどうにも締まらないコミックのような話になるのだが、読者の皆さん怒らないでください。
もしむらさきのスカートの女が存在せず、私の作り話だったとすれば、ぞっとする気もするが・・・。
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「裸の華」桜木紫乃著 集英社文庫
 クリスマスイブの札幌駅、職を求めて一人の女が降り立った。女は元ストリッパー、怪我により踊れなくなり、 故郷に戻ってショーパブを始めようとする。女の名前はフジワラノリカ(40)。
 不動産屋に物件の予約を入れていたので、開店の準備は着々と進む。 訳ありバーテンダー竜崎に、
踊り子二人にも面接し、即採用。翌2月3日「NORIKA」オープン。6人の客が入り、
まずまずというかやや寂しいスタートを切る。
 それから、さまざまな人間が集まり。地方TVドキュメンタリー番組にも取材を受け、一応順調に繁盛していく。きわどい描写もあり気を許せないが。
 (中略)
 また札幌に冬の気配が感じられる頃、踊り子が妊娠する。ノリカは店を閉める決意を固める。
ノリカは足のボルトを抜き、神奈川に戻ることにした。
 実に簡単な紹介で話がよく伝わらなかったと思うが、こういう人情味にあふれた話は桜木紫乃におまかせである。 結構泣ける場面もあり、一苦労された女性にはぜひ読んでもらいたい1冊である。
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「送り火」高橋弘希著 文藝春秋
 青森県平川の中学校に、霜が降りる頃転校してきた私(歩)が語りかける。
歩はさっそく不良グループに入り、金物屋に凶器を盗みに行き、花札くじで歩が所有者になる。
 3学期になり学級委員長は友人晃、副は歩である。そうこうして仲間との悪い遊びを続け、
進学のことも心配になってくる。さらにすさまじい最後を迎えるが、あまりにも凄惨な結末に、
この村の風習を踏まえているとはいえ心配なった。
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「燃える部屋 上・下」マイクル・コナリー著 吉沢嘉通訳 講談社文庫
  お馴染みのボッシュ・シリーズ。
違うのは定年を先伸ばして、未解決事件の洗い直しを担当し、パートナーにメキシコ系新米女刑事ルシア・ソト
とコンビを組んだことだ。
 担当の事件は、10年前広場で演奏中に銃撃されたオルランド・メルセド事件。
体内に残っていた銃弾から手掛かりを得て捜査が始まった。
 ただ単なる偶発的な銃撃事件ではなく、当時の市長選にも影響が及んでいた。
さらにソトが7歳で体験した火災事件にも関連がありそうだ。
捜査はそう簡単ではなく、細かな証拠立てや、登場人物の多さに、じっくりと読みこむ根気が必要である。
 これらがジグソーパズルの完成を待つようにピタリとはまり、衝撃の結末を迎えることになる。
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「偽りのレベッカ」アンナ・スヌクストラ著 北野あかね訳 講談社文庫
 オーストラリアのパース近くで、一人の少女がスーパーで万引きし、警察に身柄を拘束された。苦し紛れに少女が放った一言「私はレベッカ・ウィンター。 11年前に誘拐されたの」この一言が世間を驚かした。確かに容貌は瓜二つなのだが、レベッカ本人ではないことを読者は知っている。
 両親にも会い、警察にも調べられる毎日だが、「何も覚えていないのよ」と解放されたばかりで、ショックで記憶が戻ってこない主張して、だらだらと時間をかせぐ。 そうこうする内にスマホに「出ていけ」のメールが入った。誰かがすべてを知っていそうなのだ。
 小説は11年前のレベッカの様子と、現在の彼女の家族への対応を織り込んで進んでいく。報道クルーも集まって家から出るのも難しくなってくる。 それにしても11年前の子供たちの記憶はおぼろげでも、両親は何か違和感を感じるはずで、一度も過去を問わない態度が逆におかしく感じられる。
 そして最後にわずかな救いを残して小説は終わる。著者アンナにとって、これがデビュー作というから驚かされる。
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「死の接吻」アイラ・レヴィン著 中田耕治訳 ハヤカワミステリ文庫
 ストッダード大学生のおれ(24)は、恋人ドロシィ・キングシップ(18)に、妊娠2か月だと打ち明けられる。 ドロシィの父は製鋼所の社長で、彼女との交際は将来的に良さそうだったが、俺にはさらさらその気がない。逆にドロシィは貧しくとも幸せな結婚を望んでいた。 おれは最後の手段で、ドロシィにヒ素を飲ませて毒殺を計るが、薬が違っていたのか、飲まなかったのか全然効かなかった。 ドロシィの姉エレンに、ねつ造して書かせた自殺をほのめかす手紙が届く頃なのに。
 あせったおれは、婚姻届を提出する町一番に高い市政会館に行き、言葉巧みにドロシィを危険な最上階に誘導し、通気口のシャフトに落とし殺害する。
 第2部で、妹の自殺が信じられないエレンが、疑問解消と事実確認の為に、大学へ探索に行く。 「私にはすばらしいアイデァがあるのよ」。エレンは大学の学生課長から聞いて、それらしい学生を絞り込む。自分の身分は隠し、危険を冒しながら学生に接近する。
 これから実に面白いミステリが展開する。
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「アーサー・ペッパーの八つの不思議をめぐる旅」フィードラ・パトリック著 杉田七重訳 集英社文庫
 錠前屋アーサー・ペッパーは70才を前にして、40年間連れ添った妻ミリアムを亡くした。5月に一周忌を終え、遺品を整理していると、ハート型のケースが出てきた。 これを開けるとずしりと重いブレスレットが収められ、ゾウの他8つのチャームが着いていた。そこには何やら手がかりになるようなシリアルナンバーが刻まれていた。 妻はインドでメイドをしていたのを思い出した。
 アーサーはそれまで旅行はおろか、近所付き合いもなかったのだが、自分が知らない妻の素行を知ることが出来るようで、大いに興味がわいた。 隣人バーナデッドの勧めもあり、チャームのいわれを探る旅に出る。この旅が珍道中で、何故かトラを私邸で飼っているグレイストック邸に忍び込んだ。 塀を乗り越えた途端にトラに襲われ、命を落とすところだった。何とか帰り着いたものの、次はロンドン住まいの老作家を訪ねる旅へ出発する。
 失敗の連続を重ねながらも、フランスはパリまで行き、その間人に接することの重要さをじわりと悟るのである。チャームの謎解きはどうなったかって、 それはお読みになってからの楽しみというもの。
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「黒い睡蓮」ミシェル・ビュッシ著 平岡敦訳 集英社文庫
 この小説の舞台は、クロード・モネが睡蓮の連作を描いたジヴェルニーの村から1キロも離れていない所。 水車小屋がある小川でジェローム・モルヴァル眼科医が殺された。このろくでもない眼科医の捜査が本筋である。 この事件の唯一の目撃者は村に100年は住んでいるという「わたし」老婆である。 担当はヴェルノン署のロ-ランス・セレナック警部とシルヴィオ・ベナヴィット警部、わたしが目撃情報を伝えないために事件は解決に向かわない。
 死んだモルヴァルの身辺を探ると、様々な不都合が露わになる。事件から3日目、5枚の写真が警察に送られてきた。 モルヴァル医師の行為を隠し撮りしたプロが写した写真である。謎の番号まで付されていて、逆に混乱を深める捜査陣。 こうやっていたずらに日が経って行くのだが、その間にも手がかりが全くなかったわけではない。これが後に読者を悩ませることになっていく。
 さあ、この時空をとぶ手法が皆さんにはお気に召すかどうか。最後は明かせないが、しゃれた終章と言える。
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「日の名残り」カズオ・イシグロ著 土屋政雄訳 早川書房(初版は中央公論社刊)
 平成2年(1990年)「新風」会報誌に掲載HPには未掲載と思われるので載せてもらうことに。
著者カズオ・イシグロは一九五四年生まれの日本人。海洋学者の父と共に英国在住。
若いうちから英国の文学賞をつぎつぎと受賞この作品も八九年ブッカー賞を受賞した。
 小説の主な舞台は、イギリスのとある名門屋敷ダーリントンホール。主人公は親子二代ダーリントン卿に使え、父親が亡くなり、ダーリントン卿も 亡くなった後、フィラディ様に使える優秀で誠実な執事スティーブンス。
そのスティーブンスが、生まれて初めて、ご主人に一週間の休暇を許され、以前同じく勤めていたミス・ケントンを尋ねる。その時の旅行記及びその都度 思い出されたことをご主人へ手紙形式で実に丁寧な文章でつづられる。
時は第一次大戦一九二〇年代。
 一日目は父の思い出。高齢になった父が、突然足を取られて執務中に転んでしまう。その日の情景は、「開いた各寝室の戸口から、夕焼けの最後の光がオレンジ色の束に なって廊下へ流れ出している様は、いまでも鮮やかに思い出すことができます」。日の名残りの中を転んだことが信じられない父が何度も何度も石段を上下し、 石のデコボコを「まるで落とした宝石でも探しているかのように」地面を見据えていた、という表現には並々ならぬ文学作家のセンスを感じた。
 三日目はお互いに一生懸命務めているのに、張りつめた気の強さの為に言葉のイサカイは絶えない、しかし淡々として好感のもてる、ほのかな愛情をいだいたミス・ケントンとの想い出。
 四日目いよいよリトル・コンプトンに到着。ミス・ケントンにもあえて二十年前の記憶を交えながら、初めて彼は自分の言葉で話が出来る。同時にダーリントン卿が多くの人に誤解され利用され、 不幸な処遇に苦しんでいたことも知る。
 そして六日目。スティーブンは失意の中に亡くなったダーリントン卿を偲んで、正に日の名残りの夕日に向かって涙する。突然感情を打ち切る様に 「桟橋の明かりがつきましたとき、私はベンチにすわったまま後ろを向き、そこで笑い合いしゃべり合っている群衆をしばらく観察いたしました」
実にすばらしい落ち着いた文学作品の終章。ぜひ読んでいただきたい。
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「鏡の迷宮」E・O・キロヴイッツ著 越前敏弥訳 集英社文
 前回紹介した「月の満ち欠け」もルリと名乗る女性が、世代を超えて活躍した小説を紹介したが、
 今回もやや手が込んだ、一つの事件を3つの話にして、それを結びつけるもの。
《第1部ピーター・カッツ》
 文芸エージェント、ピーターが探すのは、リチャード・フリンが1980年代の事件を題材にして書いた「鏡の書」。リチャードは学生の頃から作家を目指していたが、なかなか売れなかった。 彼のアパートにローラ・ベインズが来て、シェアすることになった。同じ大学に通うリチャードはジョーゼフ・ウィーダー教授の頼みで、教授の蔵書を整理することになった。 12月初旬にウィーダー教授が何者かに殺害された。
そのことをモチーフにして書いたラフ原稿が、ピーターの目に留まり、さらにその後の完成された原稿を送るように指示していたのだが、それっきりフリンへの連絡はつかず、ことは思うように運ばない。
《2部ジョン・ケラージ》
ジョンはピーター・カッツから依頼を受け、原稿探しに乗り出す。語り手はジョンに交代する。手がかりは、フリンの経歴と最後の恋人ダナ。ロラ・ベインズのその後、さらに事件の警察の調書などである。
最後に事件を担当した刑事も加わり、第3部ロイ・フリーマンが語りだす。その都度登場人物が増え、とても1台のバスには乗りきれない。
秋の夜長とはいえ、この迷宮に読者の皆さんは耐えられるだろうか
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