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斜読玩味

~~S・リード氏のちょっと辛口書評帖~~

                             
書名 著者名 出版社 日付
「偽りのレベッカ」 アンナ・スヌクストラ著
北野あかね訳
講談社文庫 7/3
「死の接吻」 アイラ・レヴィン著
中田耕治訳
ハヤカワミステリ文庫
「アーサー・ペッパーの八つの不思議をめぐる旅」 フィードラ・パトリック/著
杉田七重/訳
集英社文庫 2/19
「黒い睡蓮」 ミシェル・ビュッシ/著
平岡敦/訳
集英社文庫
「日の名残り」 カズオ・イシグロ/著 
土屋政雄/訳
早川書房
(初版は中央公論社刊)
11/6
「鏡の迷宮」 E・O・キロヴイッツ/著 
越前敏弥/訳
集英社文庫  
「遠縁の女」 青山文平/著  文藝春秋刊 8/28
「月の満ち欠け」 佐藤正午/著 岩波書店刊
第157回直木三十五賞受賞作
「影裏」 沼田真佑/著 文藝春秋
157回芥川賞受賞作

*書名をクリックしたら、内容にいきます。

「偽りのレベッカ」アンナ・スヌクストラ著 北野あかね訳 講談社文庫
 オーストラリアのパース近くで、一人の少女がスーパーで万引きし、警察に身柄を拘束された。苦し紛れに少女が放った一言「私はレベッカ・ウィンター。 11年前に誘拐されたの」この一言が世間を驚かした。確かに容貌は瓜二つなのだが、レベッカ本人ではないことを読者は知っている。
 両親にも会い、警察にも調べられる毎日だが、「何も覚えていないのよ」と解放されたばかりで、ショックで記憶が戻ってこない主張して、だらだらと時間をかせぐ。 そうこうする内にスマホに「出ていけ」のメールが入った。誰かがすべてを知っていそうなのだ。
 小説は11年前のレベッカの様子と、現在の彼女の家族への対応を織り込んで進んでいく。報道クルーも集まって家から出るのも難しくなってくる。 それにしても11年前の子供たちの記憶はおぼろげでも、両親は何か違和感を感じるはずで、一度も過去を問わない態度が逆におかしく感じられる。
 そして最後にわずかな救いを残して小説は終わる。著者アンナにとって、これがデビュー作というから驚かされる。
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「死の接吻」アイラ・レヴィン著 中田耕治訳 ハヤカワミステリ文庫
 ストッダード大学生のおれ(24)は、恋人ドロシィ・キングシップ(18)に、妊娠2か月だと打ち明けられる。 ドロシィの父は製鋼所の社長で、彼女との交際は将来的に良さそうだったが、俺にはさらさらその気がない。逆にドロシィは貧しくとも幸せな結婚を望んでいた。 おれは最後の手段で、ドロシィにヒ素を飲ませて毒殺を計るが、薬が違っていたのか、飲まなかったのか全然効かなかった。 ドロシィの姉エレンに、ねつ造して書かせた自殺をほのめかす手紙が届く頃なのに。
 あせったおれは、婚姻届を提出する町一番に高い市政会館に行き、言葉巧みにドロシィを危険な最上階に誘導し、通気口のシャフトに落とし殺害する。
 第2部で、妹の自殺が信じられないエレンが、疑問解消と事実確認の為に、大学へ探索に行く。 「私にはすばらしいアイデァがあるのよ」。エレンは大学の学生課長から聞いて、それらしい学生を絞り込む。自分の身分は隠し、危険を冒しながら学生に接近する。
 これから実に面白いミステリが展開する。
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「アーサー・ペッパーの八つの不思議をめぐる旅」フィードラ・パトリック著 杉田七重訳 集英社文庫
 錠前屋アーサー・ペッパーは70才を前にして、40年間連れ添った妻ミリアムを亡くした。5月に一周忌を終え、遺品を整理していると、ハート型のケースが出てきた。 これを開けるとずしりと重いブレスレットが収められ、ゾウの他8つのチャームが着いていた。そこには何やら手がかりになるようなシリアルナンバーが刻まれていた。 妻はインドでメイドをしていたのを思い出した。
 アーサーはそれまで旅行はおろか、近所付き合いもなかったのだが、自分が知らない妻の素行を知ることが出来るようで、大いに興味がわいた。 隣人バーナデッドの勧めもあり、チャームのいわれを探る旅に出る。この旅が珍道中で、何故かトラを私邸で飼っているグレイストック邸に忍び込んだ。 塀を乗り越えた途端にトラに襲われ、命を落とすところだった。何とか帰り着いたものの、次はロンドン住まいの老作家を訪ねる旅へ出発する。
 失敗の連続を重ねながらも、フランスはパリまで行き、その間人に接することの重要さをじわりと悟るのである。チャームの謎解きはどうなったかって、 それはお読みになってからの楽しみというもの。
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「黒い睡蓮」ミシェル・ビュッシ著 平岡敦訳 集英社文庫
 この小説の舞台は、クロード・モネが睡蓮の連作を描いたジヴェルニーの村から1キロも離れていない所。 水車小屋がある小川でジェローム・モルヴァル眼科医が殺された。このろくでもない眼科医の捜査が本筋である。 この事件の唯一の目撃者は村に100年は住んでいるという「わたし」老婆である。 担当はヴェルノン署のロ-ランス・セレナック警部とシルヴィオ・ベナヴィット警部、わたしが目撃情報を伝えないために事件は解決に向かわない。
 死んだモルヴァルの身辺を探ると、様々な不都合が露わになる。事件から3日目、5枚の写真が警察に送られてきた。 モルヴァル医師の行為を隠し撮りしたプロが写した写真である。謎の番号まで付されていて、逆に混乱を深める捜査陣。 こうやっていたずらに日が経って行くのだが、その間にも手がかりが全くなかったわけではない。これが後に読者を悩ませることになっていく。
 さあ、この時空をとぶ手法が皆さんにはお気に召すかどうか。最後は明かせないが、しゃれた終章と言える。
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「日の名残り」カズオ・イシグロ著 土屋政雄訳 早川書房(初版は中央公論社刊)
 平成2年(1990年)「新風」会報誌に掲載HPには未掲載と思われるので載せてもらうことに。
著者カズオ・イシグロは一九五四年生まれの日本人。海洋学者の父と共に英国在住。
若いうちから英国の文学賞をつぎつぎと受賞この作品も八九年ブッカー賞を受賞した。
 小説の主な舞台は、イギリスのとある名門屋敷ダーリントンホール。主人公は親子二代ダーリントン卿に使え、父親が亡くなり、ダーリントン卿も 亡くなった後、フィラディ様に使える優秀で誠実な執事スティーブンス。
そのスティーブンスが、生まれて初めて、ご主人に一週間の休暇を許され、以前同じく勤めていたミス・ケントンを尋ねる。その時の旅行記及びその都度 思い出されたことをご主人へ手紙形式で実に丁寧な文章でつづられる。
時は第一次大戦一九二〇年代。
 一日目は父の思い出。高齢になった父が、突然足を取られて執務中に転んでしまう。その日の情景は、「開いた各寝室の戸口から、夕焼けの最後の光がオレンジ色の束に なって廊下へ流れ出している様は、いまでも鮮やかに思い出すことができます」。日の名残りの中を転んだことが信じられない父が何度も何度も石段を上下し、 石のデコボコを「まるで落とした宝石でも探しているかのように」地面を見据えていた、という表現には並々ならぬ文学作家のセンスを感じた。
 三日目はお互いに一生懸命務めているのに、張りつめた気の強さの為に言葉のイサカイは絶えない、しかし淡々として好感のもてる、ほのかな愛情をいだいたミス・ケントンとの想い出。
 四日目いよいよリトル・コンプトンに到着。ミス・ケントンにもあえて二十年前の記憶を交えながら、初めて彼は自分の言葉で話が出来る。同時にダーリントン卿が多くの人に誤解され利用され、 不幸な処遇に苦しんでいたことも知る。
 そして六日目。スティーブンは失意の中に亡くなったダーリントン卿を偲んで、正に日の名残りの夕日に向かって涙する。突然感情を打ち切る様に 「桟橋の明かりがつきましたとき、私はベンチにすわったまま後ろを向き、そこで笑い合いしゃべり合っている群衆をしばらく観察いたしました」
実にすばらしい落ち着いた文学作品の終章。ぜひ読んでいただきたい。
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「鏡の迷宮」E・O・キロヴイッツ著 越前敏弥訳 集英社文
 前回紹介した「月の満ち欠け」もルリと名乗る女性が、世代を超えて活躍した小説を紹介したが、
 今回もやや手が込んだ、一つの事件を3つの話にして、それを結びつけるもの。
《第1部ピーター・カッツ》
 文芸エージェント、ピーターが探すのは、リチャード・フリンが1980年代の事件を題材にして書いた「鏡の書」。リチャードは学生の頃から作家を目指していたが、なかなか売れなかった。 彼のアパートにローラ・ベインズが来て、シェアすることになった。同じ大学に通うリチャードはジョーゼフ・ウィーダー教授の頼みで、教授の蔵書を整理することになった。 12月初旬にウィーダー教授が何者かに殺害された。
そのことをモチーフにして書いたラフ原稿が、ピーターの目に留まり、さらにその後の完成された原稿を送るように指示していたのだが、それっきりフリンへの連絡はつかず、ことは思うように運ばない。
《2部ジョン・ケラージ》
ジョンはピーター・カッツから依頼を受け、原稿探しに乗り出す。語り手はジョンに交代する。手がかりは、フリンの経歴と最後の恋人ダナ。ロラ・ベインズのその後、さらに事件の警察の調書などである。
最後に事件を担当した刑事も加わり、第3部ロイ・フリーマンが語りだす。その都度登場人物が増え、とても1台のバスには乗りきれない。
秋の夜長とはいえ、この迷宮に読者の皆さんは耐えられるだろうか
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「遠縁の女」青山文平著 文藝春秋刊
 気になるヌードの表紙で話題になったが、今は置いている書店が少なくなっているはずだ。 是非常備して欲しい1冊。
<機織る武家>
 平和が続く時代、武家社会は経済的に厳しく、何かと生き延びる道を探らねばならない。かつて百石の武井家に婿入りした由人は、30代半ばで20俵二人扶持。 武生川の氾濫ですべてが流され、禄も10俵に落ち貧した。
 妻縫(24)は、その名の通り機織りが出来る。家で地機を織り、仕上がった反物は評判がよくかなりの稼ぎとなった。 しかしさらに上手の織り手、幾が登場し、縫は再び窮地に落ちる。最後にもらした縫の言葉が面白い。
(一つ飛ばして表題作)
<遠縁の女>
 剣道と学問に秀でた片倉隆明は、23歳になった年、父達三から武者修行に出るように言われる。この平和な時代に何故の疑問が残るが、5年間の武者修行に出る。
 5年が経過した初夏の候、新たな修行者沢村松之助(22)が現われる。松之助は言う「稽古ではなく、仕合をしませんか」その誘いは死をも意味する果し合いに近い。 覚悟をした隆明のもとに父急逝の報が入る。急ぎ国へ戻ると、父の埋葬は済んでいた。叔父が語る、5年前からの話とは。
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「月の満ち欠け」第157回 直木三十五賞受賞作 佐藤正午著 岩波書店刊
 東京ステーションHに、小山内と三角に会いたいという母娘連れが待っていた。娘の名はるりという。 母娘連れは八戸から風呂敷包みを持参し、15年ぶりの再会なのだが、三角は遅れている。これが序章である。
 小山内は、八戸生まれの梢と結婚し、娘瑠璃が生まれる。今は稲毛に住み、会社まで通勤に50分もかかる。 瑠璃が7才になったとき、何かに取りつかれたような異変が起きる。 18才になった瑠璃と妻は交通事故で死んでしまう。「えっ」この話はどうなるんだと思っていると、序に戻り今度は三角が語る長い話が始まる。 その中に出てくる人妻が正木瑠璃(27)という。
 このようにルリの継承をめぐるうちに本は半ばまで進んでしまう。変わった手法で、やや複雑ながら面白い小説だ。本屋大賞をねらって欲しい。
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「影裏」沼田真佑著 157回芥川賞受賞作 文藝春秋
 岩手の生出川沿いの土手には立派なミズナラの並木が続く。そこで釣りをする主人公今野。小説は1年前に知り合った友人日浅と、渓流釣りの話である。
 2月に日浅は退職した。4月には2人で釣ったウグイの思い出を入れ、9月半ば日浅は今野に「互助会に1口入ってくれ」と懇願。その時は感じなかったが、 日浅はかなり追い込まれていたようだ。さらに日浅は釣りに出て津波に呑まれたかもしれないという。
 本人は受賞はまぐれみたいなこと言っているが、文章の底にキラリとしたものを感じる。
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